静岡地方裁判所 昭和39年(ワ)17号 判決 1965年4月05日
主文
被告八木康男は、原告に対し金五〇万円およびこれに対する昭和三七年八月二七日以降右完済にいたるまで年六分の割合による金員を支払うこと。
原告の被告斉藤産業株式会社、同斉藤喜左エ門、同斉藤文孝に対する請求は、いずれもこれを棄却する。
訴訟費用は、原告と被告八木康男間に生じた分は同被告の負担とし、その余は全部原告の負担とする。
この判決は、第一項に限り仮りに執行することができる。
事実
原告訴訟代理人は、「被告らは、各自原告に対して金五〇万円およびこれに対する昭和三七年八月二七日以降右完済にいたるまで年六分の割合による金員を支払うこと。訴訟費用は、被告らの負担とする。」との判決、ならびに、仮執行の宣言を求め、請求の原因としてつぎのように述べた。
一、被告斉藤産業株式会社(以下単に被告会社という)、被告斉藤喜左エ門および被告斉藤文孝は、共同で昭和三七年五月二五日被告八木康男に宛てて額面金五〇万円、支払期日昭和三七年八月二六日、支払場所富士銀行長野支店、支払地振出地とも長野市なる約束手形一通を振出した。
二、原告は、被告八木康男より拒絶証書作成義務免除の上裏書により右手形の譲渡を受け、その所持人となつた。そこで原告は、右約束手形の満期日に、支払場所において支払のため呈示したところ、その支払を拒絶せられた。
三、よつて、原告は、被告らに対し合同して右手形金五〇万円およびこれに対する満期後の昭和三七年八月二七日以降右完済にいたるまで手形法所定の年六分の割合による利息の支払をなすべきことを求める。
被告会社代表者兼被告斉藤喜左エ門および被告斉藤文孝は、請求棄却の判決を求め答弁として「原告主張の請求原因事実は全部否認する。原告主張の如き約束手形は、被告らにおいて訴外田中某に宛てて振出すべく、受取人欄を空欄にしてその余の手形要件の記載を完了しておいたところ、振出日欄記載の日時頃盗難に遭いたるものであるから被告らに振出人としての責任はない。」旨述べた。
被告八木康男は、請求棄却の判決を求め、答弁として「原告主張の請求原因事実は全部認める。」と述べた。
原告訴訟代理人は「仮りに、原告の主張するように本件手形振出について交付がなかつたとしても、被告斉藤産業株式会社、同斉藤喜左エ門、同斉藤文孝は、共同して昭和三七年五月二五日訴外田中某に振出すべく本件手形の受取人欄を除くその余の手形要件を全部記載し、かつ、受取人欄の補充を右訴外人に委ねるものとしてそれぞれ記名押印、ないし、署名し、もつて本件手形を完成した上、右訴外人に対する本件手形の交付を被告会社経理係に委託しておいたところ、同日本件手形は紛失、ないし、盗取され、しかして原告は右事情を知らず本件手形が真正に振出交付されたものと信じて被告八木康男から裏書を受けたものである。したがつて、被告らはいずれにしても原告に対する本件手形金の支払義務を免れるものではない。」と述べた。
証拠(省略)